勉強 記憶

勉強は記憶してこそ意味がある

勉強は記憶にとどめてこそ、行う価値があります。
たとえ1日5時間とか10時間勉強したとしても、ざるが水をすくうように、どんどん忘れてしまっては意味をなしません。学んだことは、必ず短期記憶を経て長期記憶にまで昇華させる・・・それであってこそ学習した甲斐があるというものです。

どんどん先に進めていくだけの学習方法では、過去に学んだことが、古い順にどんどん頭から押し出され、忘れ去られていってしまいます。本人は「勉強しているつもり」になっていても、これでは、まったく学力がつきません。独学の落とし穴です。

学問とはピラミッドや高層建築のように、基本から積み上げるようにして構築していくものです。
基礎がマスターできていないと、当然のことながら応用問題は解けないのです。もちろん過去問も、思ったように解けないということになります。

このページで述べることは、多少「復習のやり方」のページとかぶるかもしれませんが、できるだけ違った角度から解説していきたいと思います。


>> 東大記憶法 〜記憶力90日向上プロジェクト〜(記憶法・遠隔セミナー)

勉強の記憶の入り口であるワーキングメモリとは?

短期記憶を長期記憶に定着させるのは、大脳辺縁系にある海馬の役目です。しかし、その前段階として記憶を処理する脳の部位があります。それが前頭葉です。

目から入ってきた視覚情報は視覚野に届き、耳から入ってきた情報は聴覚野に届きます。それらは前頭葉にある前頭連合野に送られ統合されます。おでこのすぐ裏側にある脳の部位で、いろいろな情報を統合して、判断したり思考したり、一時的に記憶したりするのです。

前頭葉は判断や思考、あるいは計画を練るといった脳の中枢ですが、同時に記憶する箇所でもあります。前頭葉での記憶はワーキングメモリという働きをもっています。これは一時的に記憶を置いておく場所。パソコンでいうとRAMみたいなものでしょうか。電源を付けているときは記憶しているけれど、電源を切ってしまえば、その記憶は消える。そんな役割を持っているのが前頭葉のワーキングメモリです。

電話帳を見て、一時的に電話番号を記憶し、電話を掛けるとします。電話を掛け終わってしまえば、その電話番後は頭からすっかり消え去っているはずです。このときワーキングメモリに記憶が一時保管されたわけです。必要に応じて記憶し、必要がなくなれば消去される。これがワーキングメモリの短期記憶です。だいたい数秒から長くても数分間保持されるといわれています。

長くても数分しか持たない記憶ですから、学習に役立たないと考えがちですが、そうではありません。
前頭葉はパソコンでいうところのCPUでありRAMです。要領が大きいほど、脳のスペックが高くなります。

ワーキングメモリはマジカルナンバー7といわれるように、だいたい5±2個程度の数字しか一度に記憶できないといわれています。かなり要領が小さいわけですね。この部分を脳のトレーニングによって、わずかでも大きくすることができれば、それだけ記憶力がアップすることになります。

ワーキングメモリから海馬へ

勉強で記憶するという場合、当然、ワーキングメモリの段階の記憶ではありません。
数分以上は覚えているからです。努力して覚えようとする場合、ワーキングメモリから、大脳辺縁系にある海馬へと情報が送られます。ここにある記憶は長期記憶というまでには至らない、中期記憶といえるようなものです。

中期記憶という言葉があるわけではありませんが、海馬にあるうちは、まだ不安定な記憶です。
海馬には約1か月程度とどまり、本当に重要な情報かどうかを吟味します。

では何を基準にして重要と判断するのでしょうか?
それは感情がともなっていたり、何度も繰り返して入ってくる情報です。

感情が伴っている記憶というのは、その生物にとって生死にかかわることです。人間の場合はピンとこないかもしれませんが、動物が情動的になる時というのは、天敵に遭遇した時が多くなります。そういった場面は、きちんと記憶しておかないと生死にかかわります。フラッとまた出かけて行っては危険だからです。

人間でいうと、そのような場面はあまりありませんが、脳の仕組み上は記憶力がアップするようになっています。感情がたかぶると扁桃体が活性化し、すぐそばにある海馬を刺激します。するとシータ(θ)波が発生して記憶力を高めるのです。

でも勉強しているときは、そんなに感情が高ぶる場面というのはありません。
ではどうしたらいいのか、というと、それは反復なわけです。何度も繰り返し海馬に情報を送り込むことによって、海馬は「これは重要に違いない」と判断します。

感情移入して勉強できれば、それに越したことはありません。たとえば歴史や英文の学習のさいには、自分が当事者や主人公になりきって読むといいかもしれませんね。そうすれば海馬を活性化できるので、少ない復習(反復)であっても記憶に定着しやすくなります。

勉強の記憶で鍛えられた海馬は、どんどん増殖していきます。
脳のなかで増殖する神経細胞(ニューロン)は、海馬の入り口にある歯状回の顆粒細胞だけです。この部分の細胞が多く、全体的に大きく発達している人は、記憶力が高い人です。前頭葉のワーキングメモリも記憶の入り口ですが、この容量の大きさが記憶力を決める重要なファクターであることと一緒です。情報が入ってくる入り口の要領が大きいか小さいか・・これが記憶力を分かつ分岐点といえるでしょう。

長期記憶にしないと意味がない

前述したように勉強の記憶は、海馬に約1か月間とどまります。その間に、感情をともなった強い刺激や、何度も繰り返される入力がなければ、重要と判断されずに忘却の彼方へ行ってしまいます。

勉強の記憶は、感情が伴うことは少ないので、あまりその効用を期待せず、どのような場合でも1か月間は何度も復習することが無難です。たとえ感情をともなった記憶であっても、繰り返すことで、より強固な記憶になるからです。

1か月間は、海馬での審査期間です。これを通過すれば、晴れて短期記憶が長期記憶に昇格します。そうなると耳のあたりにある側頭葉へと情報が転写されます。側頭葉は記憶の長期保管庫です。いったんここに刻み付けられれば、そう簡単に消え去ることはありません。勉強の記憶は、ここまでやらなければ意味がないといえます。

復習を全くせずに、予習や先に進むことだけを行う学習方法では、「自己満足」なだけで、実質的には全然実力がつかないというのは、このためです。

ただし一度は側頭葉へと保管された長期記憶であっても、時間がたつにつれて記憶が薄れていってしまいます。人間とは忘れやすい動物なのです。これは人間の脳の欠点ではなく、立派な長所です。

人間は日々生活していると、いろいろな情報が目や耳、舌、鼻、肌や筋肉から脳へと入ってきます。それらがすべて忘れ去られずに、脳に残るとしたら大変なことになってしまいます。いくら140億個もある大脳皮質のニューロンであっても、これでは数分でパンクしてしまいます。

またなんでも覚えているとしたら、嫌なことの記憶も、いつまで経っても忘れられないことに。PTSDは嫌なことを忘れられない症状ですが、それは”強烈な感情”がかかわる記憶だからです。感情がかかわる記憶は諸刃の剣といえるわけです。人は健全な精神を維持するために、睡眠中に記憶を整理整頓し、不快な記憶や不要な情報を忘れることがデフォルトになっているのです。

このように「忘れること」は、人間の脳の優れた機能です。
そのことを知ったうえで、高校受験や大学受験、そのほかの難関資格試験の勉強に励んでいる人は、本当に記憶したい部分を何度も何度も繰り返し学習して、確実に脳に定着させていきましょう!



■覚えづらい年号や英単語を簡単に覚えられる暗記法とは?
>> 記憶術日本一の藤本憲幸氏による記憶術講座 <<